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リクエストボディ ​

ルートパラメーターやクエリパラメーターは、少数の単純な値を渡すのに適しています。Todo を作成するには、クライアントからまとまった構造化データを送る必要があります。そこで使うのがリクエストボディ(request body)です。HTTP リクエスト本文に置くデータで、Web API では通常 JSON を使います。

この節の新しい概念は、record でリクエストボディの構造を宣言すると、フレームワークが JSON をその型のオブジェクトに自動変換することです。

05-request-body/Program.cs
cs
using Scalar.AspNetCore;

var builder = WebApplication.CreateBuilder(args);

builder.Services.AddOpenApi();

var app = builder.Build();

if (app.Environment.IsDevelopment())
{
    app.MapOpenApi();
    app.MapScalarApiReference();
}

List<Todo> todos = [];
var nextId = 1;

app.MapGet("/todos", () => todos);

app.MapPost("/todos", (CreateTodo input) =>
{
    var todo = new Todo(nextId++, input.Title, input.Priority, Done: false);
    todos.Add(todo);
    return todo;
});

app.Run();

record CreateTodo(string Title, int Priority);

record Todo(int Id, string Title, int Priority, bool Done);

この章から Todo API の例を少しずつ拡張し、「完全な CRUD」の章ではデータベースに接続するアプリになります。

実行と確認 ​

bash
dotnet run

POST メソッドで JSON のリクエストボディを送ります。

bash
curl -X POST http://localhost:5080/todos \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{"title":"Buy milk","priority":2}'
  • -X POST:POST メソッドを使います。
  • -H "Content-Type: application/json":リクエストボディが JSON であることをサーバーに伝えます。
  • -d '...':リクエストボディの内容です。

予想されるレスポンス:

json
{"id":1,"title":"Buy milk","priority":2,"done":false}

一覧を取得すると、先ほど作成した項目が含まれています。

bash
curl http://localhost:5080/todos
json
[{"id":1,"title":"Buy milk","priority":2,"done":false}]

ヒント

Windows PowerShell では、引用符やバックスラッシュによる改行の扱いが bash と異なり、上記の複数行コマンドをそのまま実行できない場合があります。最も簡単なのは /scalar ページを開き、POST /todos を選択して、リクエストボディ欄に JSON を入力して送信する方法です。Scalar は OpenAPI ドキュメントからリクエストボディのひな形を自動生成します。

リクエストボディの構造を宣言する ​

05-request-body/Program.cs
cs
using Scalar.AspNetCore;

var builder = WebApplication.CreateBuilder(args);

builder.Services.AddOpenApi();

var app = builder.Build();

if (app.Environment.IsDevelopment())
{
    app.MapOpenApi();
    app.MapScalarApiReference();
}

List<Todo> todos = [];
var nextId = 1;

app.MapGet("/todos", () => todos);

app.MapPost("/todos", (CreateTodo input) =>
{
    var todo = new Todo(nextId++, input.Title, input.Priority, Done: false);
    todos.Add(todo);
    return todo;
});

app.Run();

record CreateTodo(string Title, int Priority);

record Todo(int Id, string Title, int Priority, bool Done);

29 行目は「Todo の作成時に必要な情報」を record で記述しています。文字列の Title と整数の Priority です。20 行目のハンドラー引数の型は CreateTodo です。

この例は POST エンドポイントであり、CreateTodo はサービス登録もカスタムバインドもされていない複雑型(int や string のような単純な値ではない)なので、フレームワークはリクエストボディから取得すると推論します。これは前章の送信元一覧の三つ目の規則です。次にリクエスト本文を読み、.NET 組み込み JSON ライブラリの System.Text.Json を使って CreateTodo オブジェクトにデシリアライズします。

ハンドラーに入る時点で input は完全な強い型のオブジェクトです。input.Title は string、input.Priority は int です。エディターで各プロパティを補完でき、名前を間違えるとコンパイルエラーになります。

ヒント

JSON プロパティ名の照合では大文字と小文字を区別しません。{"TITLE":"Case test","Priority":1} を送っても正しくバインドされます。レスポンス内のプロパティ名は camelCase に統一されます。これは「最初の一歩」で説明した Web の既定設定です。

FastAPI との比較

FastAPI で Pydantic モデルを引数の型にする def create(todo: CreateTodo) と同じ考え方です。異なるのは、record はデータの形を表すだけで、既定では検証を行わないことです。その結果を次に見ます。

CreateTodo を別に定義する理由 ​

05-request-body/Program.cs
cs
using Scalar.AspNetCore;

var builder = WebApplication.CreateBuilder(args);

builder.Services.AddOpenApi();

var app = builder.Build();

if (app.Environment.IsDevelopment())
{
    app.MapOpenApi();
    app.MapScalarApiReference();
}

List<Todo> todos = [];
var nextId = 1;

app.MapGet("/todos", () => todos);

app.MapPost("/todos", (CreateTodo input) =>
{
    var todo = new Todo(nextId++, input.Title, input.Priority, Done: false);
    todos.Add(todo);
    return todo;
});

app.Run();

record CreateTodo(string Title, int Priority);

record Todo(int Id, string Title, int Priority, bool Done);

ファイルには二つの record があります。29 行目の CreateTodo は、クライアントが送信できる内容を表す入力モデルです。31 行目の Todo は、システムに保存する内容を表すデータモデルです。なぜ Todo を直接引数として受け取らないのでしょうか。

Todo には Id と Done があり、この値をクライアントに決めさせるべきではないからです。Id はサーバーが割り当て、新しい Todo は必ず未完了です。Todo をそのまま受け取ると、クライアントが id と done を指定できてしまいます。

入力に CreateTodo を使えば、クライアントはこの二つのフィールドをそもそも設定できません。余分なプロパティも送ってみましょう。

bash
curl -X POST http://localhost:5080/todos \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{"title":"Extra","priority":1,"id":999,"done":true}'
json
{"id":2,"title":"Extra","priority":1,"done":false}

CreateTodo に対応するプロパティがないため、id と done は無視されます。22 行目でこれらの値はサーバーが決めています。入力と保存モデルを分けることで、過剰な割り当て(over-posting)と呼ばれるセキュリティ問題を防げます。

注意

この章の例はデータをメモリ内の List に保存するため、プログラムを再起動すると消えます。また List と nextId++ はスレッドセーフではなく、複数のリクエストが同時に書き込むと問題が起こる場合があります。例を簡潔にするための実装であり、「EF Core の基礎」の章で実際のデータベースに置き換えます。

リクエストボディに問題がある場合 ​

形式エラー ​

JSON の構文が誤っている場合や、値の型が合わない場合、フレームワークは 400 を返し、ハンドラーは実行されません。

bash
curl -i -X POST http://localhost:5080/todos \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{"title":"x","priority":"high"}'
http
HTTP/1.1 400 Bad Request
Content-Type: text/plain; charset=utf-8

Microsoft.AspNetCore.Http.BadHttpRequestException: Failed to read parameter "CreateTodo input" from the request body as JSON.
 ---> System.Text.Json.JsonException: The JSON value could not be converted to CreateTodo. Path: $.priority | LineNumber: 0 | BytePositionInLine: 30.

エラーは問題の箇所 $.priority を示しています。"high" を int に変換できないためです。

Content-Type を忘れた場合 ​

このチュートリアルでは JSON リクエストボディを Content-Type: application/json で宣言します。application/*+json のように +json で終わるメディアタイプもフレームワークは受け入れます。リクエストボディを含むのにサポート対象の JSON メディアタイプを指定しないと、415 Unsupported Media Type(サポートされていないメディアタイプ)が返ります。

http
HTTP/1.1 415 Unsupported Media Type
Content-Length: 0

フレームワークは JSON と宣言されたリクエストボディだけを JSON として解析します。JSON 自体は正しくても、ヘッダーが欠けていると失敗するのはよくある問題です。

フィールドが足りない場合 ​

特に注意が必要なのは次のケースです。

bash
curl -X POST http://localhost:5080/todos \
  -H "Content-Type: application/json" \
  -d '{"priority":3}'
json
{"id":3,"title":null,"priority":3,"done":false}

リクエストは成功しましたが、CreateTodo の Title 型が null 不可の string であるにもかかわらず、title は null です。空のオブジェクト {} を送ると、さらに意外なことに title は null、priority は 0 の Todo ができます。

理由は「C# の概要」で説明しました。nullable 参照型のチェックはコンパイル時です。JSON のデシリアライズは実行時に行われるため、欠けている文字列プロパティは null、数値は 0 に設定され、エラーは発生しません。

デシリアライズが保証するのは「形式が正しい」ことだけで、「内容が妥当」であることではありません。タイトルが空でないこと、優先度が 1~5 であることなどの業務規則は別途検査する必要があります。次章のテーマです。

技術詳細

System.Text.Json には RespectNullableAnnotations などのオプションがあり、null に遭遇した際にデシリアライズを失敗させられます。ただし検査できるのは「null かどうか」だけで、「長さが 50 以下」などの規則は表現できません。次章の検証機能では、これらをまとめて扱い、構造化されたエラー情報を返せます。

まとめ ​

  • この章の POST エンドポイントでは、通常の複雑型引数(CreateTodo など)は既定でリクエストボディから JSON を読み取ります。この推論は GET などのメソッドや、サービス登録された型には適用されません。
  • JSON リクエストボディには、サポートされる Content-Type を指定します。このチュートリアルでは application/json を使用します。非対応のメディアタイプは 415、JSON 形式エラーや型不一致は 400 です。
  • 専用の入力モデル(CreateTodo)を使い、データモデル(Todo)と分けます。サーバー管理のフィールド(Id など)をクライアントが改変できません。
  • デシリアライズは業務規則を検査しません。欠けたフィールドは null または 0 になり、別途検証が必要です。

次の章:入力検証——不正な入力をハンドラーの実行前にフレームワークが拒否するようにします。前の章:クエリパラメーター。

.NET 10 と Minimal API を使用 · 各章に実行可能なサンプルを用意